One’s Way[ワンズウェイ]のブログでは、里山暮らしのあれこれを綴ります。ヘンリー・ デイヴィッド・ソロー の影響を受け、エシカルな暮らしを追求中。薪ストーブを暮らしの核とし、菜園、ガーデニング、サイクリング、ランニングなどを楽しんでします。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(その11)施工編(2)2017/01/01

スラブの水撒き
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章です。

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②コンクリート基礎スラブ部の養生 2000年7月

コンクリート基礎工事の99パーセントまでは、1999年12月までに終わり、約半年間そのままにしておきました。

その間に、前述のピン頭切断の仕事を行ったり、車庫になる部分などに山砂を入れてもらい、梅雨の雨で土を固めたりして、2000年7月になりました。あと、風呂場、脱衣場のテラコッタタイル下のスラブが残っていました。

このスラブだけは、暑い7月作業だったので、コンクリートが流し込まれた後、私たちは、通勤前の早朝と、帰宅後の夕方、コンクリートが急激に乾くのを防ぐために、水を撒きに行きました。2週間しっかりコンクリートを固めてから、野手さんに型枠を外してもらいました。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(その12)施工編(3)2017/01/01

外壁塗り直し中
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章です。

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③外壁の塗装 2000年7月~8月

この仕事は、とても大きな塗り絵といった感じで、それはそれは楽しい仕事でした。「家作りに参加している!」という実感は、極めて大きい仕事です。それに、外仕事なので、目立つしね。

我が家の外壁は、杉板の下見張りなので、外壁として杉板が張られる前に、あらかじめ数百枚の杉板の片面と側面および木口に、ローラーを使って塗装しました。そして、杉板が外壁として張られた後、もう一度足場に乗りながら、2度塗りをしました。

本当なら、1度塗りでいいのですが、塗装したたくさんの杉板を重ねておいたため、外壁に張る際、杉板同士がくっついてしまい、塗装が剥がれてしまった箇所ができてしまったのです。再度、外壁として張られた状態で塗り直しました。

塗装仕事のいいところは、このように失敗しても、塗り直しがきくというか、逆に、多く塗ればそれだけ外壁として長持ちするようになるということです。「禍転じて福となす」です。

腕のいい塗装屋さんなら、少ない塗料で薄くきれいに塗ることができるでしょう。私たちは素人なので、薄く塗ることはできませんが、厚く塗っても別に構わないでしょう。外壁が長持ちするようになるだけです。塗料の量が多くなっても、たかがしれています。

この外壁塗装に関して、塗装屋の棚田さん(小杉町戸破)と、稲田木材さん(小杉町高寺)に、大変お世話のなりました。塗装仕事は、稲田木材さんの倉庫をお借りしてやらせてもらい、棚田さんには塗料取り寄せ(私たちが個人的に購入すると高くつきます)と道具拝借をお願いしました。偶然ですが、稲田木材さんの倉庫は棚田さんの自宅の何と隣でした。

最後に、私たちが使用した塗料を紹介します。和信化学ガードラックアクア(水性)で、色はサファイアグレイ(母屋)と白木色(車庫およびデッキ)です。僕の妻が、小杉の木材試験所に出向き、環境と耐久性との両面から、適した塗料にはどのようなものがあるのか情報収集しました。1つ読者の皆さんにアドバイスします。濃い色の外壁の方が、紫外線に強いとのことでしたよ。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(その13)施工編(4)2017/01/01

断熱材が入った壁
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章です。

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④断熱用炭化コルクボード張り 2000年8月

天野設計士さんの意見では、青井谷は、冬の気候を中心に考える方がよい、とのことでした。でもここは高温多湿、モンスーン気候の日本です。冬の暮しと夏の暮しとの間で、いかに折り合いをつけていくか。私たちの結論は、高気密よりも高断熱に重点を置くことでした。

高気密にはなぜこだわらなかったか。その理由は、薪ストーブにあります。薪ストーブは、煙突を通じて排気します。排気するということは、新しい空気を室内に取り込まなければなりません。事実、高気密の家に薪ストーブを設置する際、ストーブの下に、意図的に空気取り入れ工事をします。

じゃ、薪ストーブは、非効率的な暖房機具かと言われれば、答えはNO.です。その理由は、薪ストーブの暖房力が遠赤外線にあるからです。空気を暖めるよりも、人間を含めて物質を暖めるからです。空気が多少入れ替えあっても問題ありません。

というか、例えば、室温が摂氏20度もあれば、暑いくらいです(個人差はありますが)。遠赤外線の威力は味わったら逃れられませんよ。私たちは木や漆喰の自然素材を建築材料に選び蓄熱性を高め、完全な意味での高気密にはこだわりませんでした。しかし、引戸は用いず開き戸にし、気密したいときはできるようにしました。

さて、高断熱の話に戻ります。断熱材としてよく使われるのがグラスウール。でもグラスウールは結露などで湿ったら断熱効果は下がり、しかも湿った重みで、壁内で下がってきます。これでは断熱材の用は果たしません。

次に、発泡ウレタン。実は、これを天野さんに勧められました。「カップラーメンの発泡容器は、100度のお湯を入れても、手で持てますよ。断熱効果は抜群です。」と。でも、発泡ウレタンは石油製品です。今の技術では自然界では循環しない物質です。

私たちは、多少(かなり)高価でしたが、炭化コルクボードを採用しました。炭化コルクボードは、断熱、防音、防虫、そして調湿効果があるとのことです。梅雨の湿度対策にも良い。宮田の大工さんにお願いして、炭化コルクボードを取り寄せてもらいました。

ほとんど炭みたいなものなので、切断したりする際、汚れるし、宮田さんには苦労をかけたと思います。私たちは、これを壁に入れる作業を、大工見習いの宮内君と一緒に少し手伝いました。後から追加できないし、自分の家の断熱ですから、本当に真剣になりましたね。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(その14)施工編(5)2017/01/01

板壁貼り
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章です。

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⑤室内の板壁張り 2000年8月~9月

ほとんど、宮田さんがされましたが、少し自分でもやらせてもらいました。ここで、プロとアマの違いをまざまざと感じました。

僕が板を張る際、重力に逆らわず、床面に壁板を置いて釘止めしていきます。宮田さんは違っていました。重力に逆らって、天井部に壁板をくっつけて釘止めしていかれました。

するとどうでしょう。板は微妙に長さが違います。その長さの違いがどこに残るかというと、僕の場合上にでてきます。宮田さんの場合下にでてきます。下にでても家具などが置かれたりして隠れたり、下の段差は目立ちません。ところが上の場合、よく目立ちます。こんな小さなところにも、プロとしての技術が出てきます。感心しました。

あと、脱衣場の板壁や天井板は、オスモ社の防水ワックスを2度塗りしました。これは私たち夫婦の仕事です。塗り絵感覚で、楽しんでやりました。

オスモ社は、ドイツの会社で、環境に優しい塗料を作っています。塗装屋の棚田さんにこのワックスをいただきました。さらに、床板のワックスがけも自分たちで行いました。床板は杉のムク材です。肌に触れるところなので、ワックスは、アウロ社(ドイツ)の自然素材系ワックスです。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(その15)施工編(6)2017/01/01

碍子(がいし)
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章を修正して掲載しました。

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⑥電気関係

私たちは、家を建てる前から、正確に言うと、土地探しの段階から、照明の傘や照明器具を、骨董市などで集めていました。

2人で品定めをしながら探す過程も、本当に楽しいひとときでした。また、妻の実家が解体される際、碍子(ガイシ)といって陶器でできた電線を取り付ける部品を自分たちで取り外してきました。それをきれいに水洗いし、車庫の梁に電線取り付け用として使用しました。取り付けは稲田電気さん(小杉町愛宕)のお願いしました。

私たちの照明器具の中で自慢したいものの一つが、玄関へのアプローチ橋に取り付けられた船舶用照明に似た照明機具です。これで橋がライトアップされると、なかなか素敵ですよ。これは、わざわざ東京まで足を運び、2人で買ってきました。

そして、これを取り付けてくださった電気屋さんは、井波電気さん(小杉町若宮)です。井波電気さんは、唯一私たちが依頼したクラフトマンの中で、僕の両親の代からお世話になっている方です。とても丁寧。正確に仕事をされ信頼感がありました。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(その16)施工編(7)2017/01/01

ようやく表札がつきました
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章を一部修正して掲載しました。

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⑦「探し」の旅

このような照明器具やドアのノブ、表札など、家に関するモノ探しや、建築及び環境に関する情報収集の旅は、その旅自体を楽しむ気持ちで行えば、たとえ、自分たちの求めていたモノが不漁に終わっても、そんなに苦になりません。でも、これだけは断言できます。「歩いた分だけ良いモノに出会える」ということです。県内はもちろん、若狭、長野、京都いろいろ歩きましたが、やはり、情報と流通の最大の集積点は東京です。

建築に関する情報は、新宿パークタワービル内の”OZONE”で収集しました。このビル内には、雑貨で有名な”コンランショップ”もあり、有効活用させてもらいました。

旅を楽しむことに関して、私たちは、品川の”パシフィックホテル”がお気に入りで(サザンオールスターズの歌で有名になる以前からです)よく利用しました。ホテルのプールや高輪の森散策を楽しんだり、夜のバーでのひとときや東京の夜景を味わったりしたものです。

劇団四季のミュージカルなども旅の中に組み込んで、その帰りには銀座の”ピルゼン”というビアホールで、ミュージカルの興奮を冷ますというか、更に盛り上がりました。ちなみにこの”ピルゼン”にあった椅子やテーブルなどは、粟巣野の”KAKI”という手作り家具屋さんの作品が使われていました。我が家の椅子、テーブル、オーディオラックなどもKAKI製です。(オーディオラックは、KAKIで働いている中村和生さん<通称たまちゃん>というクラフトマンが心を込めて作ってくれました)。

その”ピルゼン”は、昨年店じまいをされました。とても残念でしたが、なんと!”ピルゼン”の椅子、テーブル類が粟巣野のKAKIに戻ってきていました。今度は、KAKIの息子さんのイタリアレストランで使われる予定だそうです。本当に良いモノとは、このように継承され残っていくものですね。「天寿を全うする」ものです。

話はかなり逸れましたが、このように、家を建てる過程を楽しむこととは、「家」というモノを通して確認された自分自身のアイデンティティに基づき、人生を楽しむということではないでしょうか。そしてその場に、その時に、共感し会える人生のパートナーが居てくれれば、あとは何を望みましょう。最終的に家が建たなくてもいいと思ったりします。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(その17)施工編(8)2017/01/01

壁塗り
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章を修正して掲載します。

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⑧漆喰の壁塗り 2000年9月~10月

実は、漆喰の壁塗りは私たちにはできませんでした。当初の予定では、壁塗りを私たち自身の手で行いたいと思っていました。青井谷在住の左官屋である高松さんにその旨を相談したところ、「上塗りはとても不可能だと思うから、下塗りをやってみなさい。」と、快く了解して下さいました。

季節は9月の終わりで、里山は栗、松茸など、秋の味覚の頃です。「家作りの秋」とはあまり聞かれませんが、気候的にも仕事がとても気持ちよく行えるだろうなと、楽しみにしていました。しかし、その望みは第一歩目から打ち砕かれました。水上さんは「こうするんだよ」と、いとも簡単に壁土を鏝(こて)の上に乗せるのですが、これが本当に難しいのです。また、鏝に乗せても、今度は、石膏ボードの上に伸ばしながら塗っていくことがいかに難しかったことか。

壁塗りは、時間との戦いです。素早く塗ってしまわないと、乾いて塗れなくなってしまいます。さぞかし、高松さんはイライラしておられたことでしょう。でもそんな素振りも見せず、私たちの四苦八苦の様子を静かに視ておられました。ついに、私たちは、今の自分たちの技術では到底不可能と思い、あきらめました。

その時の高松さんの言葉が印象的です。「君たちにできないだろうということは、最初から分っていたよ。でも、言葉で説明しても納得しないだろうから、やらせてみたんだよ。」

私たちは、「セルフビルド」に執着していました。多少出来映えが落ちても、不可能ではないと信じていました。それが、「自立」だと思っていました。でも、この時こそ気持ちよくクラフトマンの援助を受け入れることができたことはありません。そして、その仕事に対し、金銭という形で応え、感謝の意を表すことに、微塵も疑問を抱きませんでした。

私たちは、難しい経済や流通の仕組みについてはよく分らないけど、仕事とそれに対する報酬といった世の中の仕組みの基本を見たような気がしました。人間全てがマルチプレーヤーになる必要はありません。受け入れることができる援助は活用して、幸福を実現するといった私たち自身の人生目標を達成していくこと、それが望ましいのではないかと思います。それは決して、依存的な人間になることとは違います。

個人として僕がどのような暮しをしたいか、どのような哲学を持っているかといったことを明確に自覚した上で、そのためにどのような援助が必要で、その援助は誰にお願いすればよいかを、主体的に考える姿勢を持ち続けることが大切だと思います。

腰を痛めながらも仕事をして下さった高松さん、本当にどうもありがとうございました。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(その18)施工編(9)2017/01/01

池ノ平スキー場ペンションシェーネJan.2001
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章を修正して掲載します。

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⑨コンポストトイレについて 2000年1月~2001年1月

私たちは、毎冬、妙高高原池ノ平スキーに出かけます。このスキー場は、スキー発祥の地、高田に近く、歴史も古いスキー場です。無理な地形をレジャー開発したのではなく、ゲレンデスキー場に最適な場所を選んでつくられたので、リフトの数は少ないのですが、とても滑りごたえのある、気持ちの良いスキー場です。

背後には妙高山がそびえ、眼下には野尻湖の輪郭がくっきり見下ろせます。近くには、妙高杉の原スキー場や赤倉スキー場といった人気の高いスキー場があるおかげで、池ノ平はゲレンデも混んでおらず、自分の思ったとおりのシュプールを描くことが可能です。

私たちが妙高高原で泊まるペンションはここ10年来決まっています。ある友人に教えてもらったペンション"シェーネ”です。その友人は、しっかりとした自分の考え方に基づき行動している人で、気持ちのいい人です。彼は、気に入ったお店などがあると、とことんそこを利用するのです。

「シェーネ」とは、ドイツ語で「美しい」という意味です。白樺の森の中に建つシェーネのような、素敵な家を、私たちもいつか建てたいと願っていました。自分のスタイルを持ち続けること、自分のスタイルと周りの環境との調和を図ること、これがいかに重要かを、両手を広げたような姿の、懐の深い妙高高原で学びました。

この池ノ平からの帰り道、入善町にある”ダックスファーム”という喫茶店に立ち寄りました。このダックスファームのトイレが、コスモエース社の”コンポストトイレ”でした。人間の屎尿をおが屑と混ぜ、発酵させ堆肥化させるシステムのトイレです。

「発酵」と「腐敗」は違います。水分過多と酸素欠乏が、腐敗を招きます。発酵には、適度な水分と酸素が必要なのです。五箇山の合掌造り民家を見学したとき、ウンチを溜める場所とオシッコを溜める場所が分かれていました。オシッコは火薬の原料となる煙硝(エンショウ)を作る材料に使うということもありますが、ウンチを発酵させるためには、水分過多にさせないためにも、オシッコと分けていたのではないかと思います。

コンポストトイレは、大小混合ですが、機械的に熱を加え攪拌することによって、発酵させます。約4ヶ月で堆肥を取り出すことができますが、便の強烈な臭いはしません。また、コンポストトイレは、トイレからは下水を出さずに済みます。

このトイレの設置には、コスモエース工業の木下さん(東京都在住)、配管業の大松さん(中太閤山在住)、配線関係は井波電気さん(小杉町戸破)にお願いしました。

人間も自然の一部なので、「人間」と「自然」といった対比は必ずしも正しいわけではないかもしれませんが、「人間」が生を営むこと、それ自体、環境に負荷をかけていることではないでしょうか。「自然」にやさしいことを突き詰めれば、「人間」存在を否定しなければなりません。ひょっとしたら、「人間」存在の否定は正しいという歴史段階に入っているのかもしれません(ペスィミスィティックかもしれませんが)。

でも私たちは、現に生まれ、今も生きているのだし、生き抜く義務があります。重要なのは、「自然」と「人間」の上手な<折り合い>の付け方ではないかと思います。先程も述べましたが、あくまで「人間」は「自然」の一部です。イニシアティブは「自然」が握っています。「自然」は黙して多くを語らず、一見弱い立場に見えますが、「人間」を生かすも殺すも「自然」が主体だと思います。飛躍しすぎかもしれませんが、「自然」と「人間」の<折り合い>を、私たちは池ノ平スキー場に見ました。私たちは、コンポストトイレを、<折り合い>の一手段にしたいと思っています。

注:現在は一般的な水洗トイレを使用しています。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(その19)施工編(10)2017/01/01

1階の建具[トイレ・勝手口・お風呂]
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章を修正して掲載します。

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⑩建具の製作 2001年1月~7月

我が家の建具(室内のドア)は、合計6枚です。材質は米松で、デザインは6枚とも同じです。

ドアノブは、東京渋谷の”東急ハンズ”で買いました。建具製作に関しては、僕の叔父、寺田洋氏(富山市在住)が建具製作を生業としているので、お願いしました。

自分たちでドアのデザインスケッチを描き、それを見せて、材料を取り寄せてもらいました。部材の製材は、機械の使い方を教えてもらい、休みを利用して、自分でさせてもらいました。組み立ても少しだけしましたが、僕の仕事の方も忙しくなり、叔父さんに多くをしてもらいました。

出来上がったドアを持ち上げてみると、ものすごい重量でした。蝶番で取り付けられると、その重量感は微塵も感じられませんが、ムクの木でできたドアは、本当に重いものです。それでも、ベニヤのドアにはない、いいものを持っています。

木は、呼吸するというか調湿効果があります。ベニヤも元は木かもしれませんが、呼吸しません。エアコンなどで機械的に調湿するという方法は、私たちは好みません。なるべく自然な形で、自然に対しパッシブな姿勢で、快適な暮しを目指したいと思っています。

松のムク材なので、松ヤニが出てきます。好みの問題だと思いますが、私たちは、気にしません。我が家の建築に関係したクラフトマンの中で、建具製作のみ私たちの親類でした。親類の作品が、我が家に残せたことは、嬉しいことだと思います。

ところで、私たちは、約半年、建具無しで過しました。トイレのドアも無かったのです。さすがにトイレは、布を垂らして目隠しにしましたが。このドアのない約半年の暮しの中で学んだこと、それは「家を作りながら暮らすことの可能性」です。我が家の完成記念日はありません。入居記念日はありますが。

私たち自身も年を重ねるにつれて、暮し方、考え方に変化がでてくるでしょう。それにつれて、家も変化していくようにしたいと思います。私たちのライフステージに見合ったものに、家が変化(進化)できるような、余裕を残しておきたいと思っています。そのためにも、家は断然!シンプルである方がよいと思います。日々手をかけながら、家とお付合いする、そんな暮しを目指します。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(エピローグ)資金編2017/01/01

2016年 初夏のわが家
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章を修正して掲載しました。

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「お金で解決できる問題は、安い」

一回でもいいから言ってみたいセリフだと思いませんか。でも、考えてみてください。お金を貯めることは、ある程度までは自分でコントロール可能な問題です。

それに対して、住みたい「土地」との巡り会いや、いいクラフトマン(職人)との出会いは、自分だけで決済できる問題ではありません。お金では買うことができないものです。どちらが難問かと尋ねられたら、後者だと思います。

しかし、お金もやっかいな問題を抱えることがあります。それは、「他人のお金」を当てにするときです。「他人のお金」にもいろいろありますが、最もやっかいなのは、「赤の他人のお金」より、「身内の人のお金」だと思います。それも身内の代表、「親」です。

「えっ!やっかいな問題?それはありがたい問題でしょう!」
そう言われるかもしれません。両親が資金援助してくれる。確かにそれは大変ありがたいことです。でも、家は、一生に一度、建てることが出来るか出来ないかという一大事業です。何としてでも自分たち夫婦だけの資金で建てたい、そう思いました。

ある、建築関係者が、「富山じゃ、新築資金の約3割は、親の援助ですよ」とおっしゃったそうです。富山県人の一人として、極めて屈辱的だと思いました。

「持ち家率、家の大きさの全国平均で富山県は・・・」とは、一体何の意味があるのでしょうか。

私たちは、お互いの両親に本当に恵まれました。両親は、経済的にも社会的にも自立しており、そして更に重要なことは心身共に健康で、私たちが、「自分たちの力で家を建てたい」と告白しても、それを理解してくれました。私たちのしたいようにさせてくれました。

自立的に家を建てることを目指そうとしても、親の介護や仕事の跡継ぎ等、家庭の諸問題でできない場合もあると思います。本当に両親には感謝しています。言葉では言い表せません。

この点にしても、「やっぱり、”幸福”はお金では買えない」と、私たちは断言できます。(了)


※今回で、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章は終わります。お読みいただきありがとうございました。