One’s Way[ワンズウェイ]のブログでは、里山暮らしのあれこれを綴ります。ヘンリー・ デイヴィッド・ソロー の影響を受け、エシカルな暮らしを追求中。薪ストーブを暮らしの核とし、菜園、ガーデニング、サイクリング、ランニングなどを楽しんでします。

■ インセンティブ by T2020/03/21

薪の山を眺める
昨日のブログで、薪ストーブを家の唯一の暖房手段に設定することが薪作り最大のインセンティブ(動機付けとなる要因・誘因)であると書きました。

インセンティブが最大になることは単に動機付けが最大になるだけでなく、かつて思想家ヘンリーDソローが著書『ウォールデン 森の生活』で書いていたように、「自分の薪の山を見るときは愛着の眼差しをそこに向ける」ように自然となっていきます。「薪の山が増えると、楽しい仕事を思い出させてくれる」ようになります。

つまり薪作りが単調で辛い苦役ではなく、反対に気持ちの良い楽しみとなり生活の一部になるわけです。そうなってしまえばしめたもの。俗世間の無益な気晴らしや嗜癖浪費の誘惑に埋没することなく、正のスパイラルに導かれ日常のルーティンそのものが喜びとなっていきます。

先日『貧乏人の経済学』(A.V.バナジー&E.デュフロ著 2012)を読みました。そこには世界的極度の貧困者であったとしても、誰よりも飢えを解決せねばならない極貧者にもかかわらず、栄養摂取増や野菜等の健康食材を求めるより、一時の美味しさや嗜好品を求める現実がフィールド調査によって紹介されてました。貧しくラジオやTVを買えなければ祭りに多額の出費を費やす事例もありました。貧乏だから少ししか食べられないというよりは、時に目先の安上がりな美味や眼前の娯楽に走ってしまう。行動経済学で語られる「時間の割引」つまり嫌なことは先送りし目先の利益に走ってしまう人間特性に合致するような検証もなされていました。

つまり、貧しき者を悩ます最大の敵は飢えよりも退屈さ、というわけでしょうか。

この検証は、発展途上国の絶対貧困に限らず、先進国で見られるような相対貧困者において肥満や喫煙、アルコール問題等を抱える傾向が強い現実とも合致します。

現在の格差世界に求められることは、場当たり的な上から目線の補助金ばらまき援助ではなく、人間の自主性と自尊心を培うような内なるインセンティブを刺激することではなかろうかと思います。

『ウォールデン 森の生活』にはこんな一節があります。

「最も賢い人々は貧しい人々よりも遥かに質素で、あまり豊かでない生活を今までしてきた。中国、インド、ペルシャ、ギリシャの古代哲人たちは外観によって富が判断されるならば、これ以上の貧しさはなく、逆に内面によって判断されるならば、これに勝るものがない程の富を有する階級の人間だ。」    ヘンリー D ソロー

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