■ 緑の指 by T ― 2020/05/19
義母の庭から時々花木を頂きます。我が家の庭に植栽された花々の半分以上は、義母が育てたり増やしたりした花々です。中には、ある日義母がユズを食べ、そのユズの種を土に埋めておいたら芽が出たというユズの木もあります。現在は僕の身長を越えています。
義母から頂いた花木は、不思議と根の活着率が高いのです。その理由は定かではありませんが、僕はグリーンフィンガーズ(緑の指)の仕業だと信じています。グリーンフィンガーズとは、その人に触れられた植物は不思議とイキイキしてくる、そんな優秀な園芸家のことで、「グリーンフィンガーズを持つ人」と表現します。
義母の庭は足の踏み場も無いほど植物が育っています。剪定されたアジサイやツバキの枝が可愛そうな顔をしていたからと、土に挿しておいたら根付いたという風に、次から次へと増えるからです。おそらくグリーンフィンガーズの持ち主は、植物たちの声を聞き分けることができるのでしょう。
次から次へと増えるだけでなく、増えた花々を義母はとても気前良く株分けしてくれます。それはあたかも、株分けされて子孫を遠く広く拡散繁殖していきたいという花々の声を聞き取っているかのようです。
グリーンフィンガーズは直感的に知っているのでしょう。
「最終的に後世に残っていくものは、自分が集めたものでなく、自分が与えたものであることを。」
そんな「与える緑の指」を、僕も持ちたいと切に思います。