One’s Way[ワンズウェイ]のブログでは、里山暮らしのあれこれを綴ります。ヘンリー・ デイヴィッド・ソロー の影響を受け、エシカルな暮らしを追求中。薪ストーブを暮らしの核とし、菜園、ガーデニング、サイクリング、ランニングなどを楽しんでします。

■ 幸せな人生 by T2020/06/21

紫陽花いろいろ
かつて僕にはこんな叔父さんがいた。彼は2011年に亡くなった。享年62歳だった。

彼は大阪外国語大学時代、スペイン・ポルトガルへ留学し約2年間をヨーロッパで過ごした。帰国して就職し、仕事では4年間のブラジル勤務を含め海外を飛び回った。欧州勤務ではドイツ語圏以外通訳無しで仕事をこなした。時々お土産に本場の自転車関係雑誌を買ってきてもらっていた。

50歳になった時、突然仕事を辞め、一転京都の山中で農業を始めた。ある日、僕は彼に尋ねた。「時々海外へ行きたくならないの?」

彼ははっきり言った。「全く行きたくない。そんな仕事は次の世代がすればよい。俺はここに居るのが最高」

満足するまで外地を飛び回ったからだろうか?いやそうではない。反対にどれだけ未知の場所へ行き続けても行き尽くし満足などできないことを悟ったのだと僕は思う。

彼はその後農業を続け、ある日の夕食に家族と一緒に大好きなワインを飲み、翌朝自宅の床の上で亡くなっていた。

人それぞれ幸福の捉え方が違うと思う。行った所の収集癖の如く、まだ訪れたことのない場所へ可能な限り行く人生が幸福という人もいるだろう。その一方で、自分が見つけたここぞというお気に入りの場所で、大地にしっかり根を下ろし、落ち着いた日々を送るのに至福を感じる人もいる。

そんな唯一無二の場所を夫婦で見つけることができたならば、それはとても幸せなことだと思う。