■ お金だけでは持続できないモノ by T ― 2019/11/14
薪の調達に苦労しているのは薪ストーブのユーザーだけではありません。薪ストーブを販売しているショップの方も苦労しています。先日、ある薪ストーブ店の経営者が話していました。
「薪ストーブを販売していて、薪の販売情報を持たないのは、車を販売しているのにガソリンスタンドの場所を知らないのと同じ。それは無責任。現在、私のお店では薪の販売までビジネスを拡大することはできないけど、せめて顧客に薪の入手ルート情報を提供できるようになっておかなければ・・。」
樹木の生えた山が身近にあるにもかかわらず、案外薪を購入調達することが難しいのが現状です。
僕の所属している金山里山の会では、コナラ薪の販売を行っていますが、現状は極めて需要過多で、供給が追い付いていません。そもそも会員の作業ペースと能力を越えた薪生産を追求していません。会では利益追求よりも、持続可能なレベルの経済活動の一貫として、里山で人間が活動することを目的としています。
さて、出来上がった乾燥薪を購入すると仮定しましょう。我が家の場合、1シーズンで約10立米の薪が必要。すると市場価格では約25万〜30万円必要となり、平均的家計から見ると持続可能なエネルギーとは到底言えなくなります。
化石燃料や原子力と異なり、薪は持続可能なクリーンエネルギーと認識されています。しかし需要過多と高額の購入薪という二つの要因が、薪をして代替の持続可能エネルギーになり得ていないのが現実です。
ところで、かのアインシュタインは述べています。
「ある問題が生じた時、その問題を解決するためには、既存のマインドセット(価値観)を変えないでは、その問題を解決することはできない。」
つまり、マインドセットを変え行動を変えなければ、どれだけ代替エネルギーを見つけても根本的な問題解決には至らないということです。
既存の暮らし方、即ち、何らかの労働によってお金を獲得し、そのお金で暮らしに必要な全エネルギーを不労購入するというライフスタイルを少しだけ変更するとしたら、どうなるでしょうか?
たとえば月に1日だけ里山に入り、倒木や折れ枝を片付ける里山保全労働に従事する。その代わりに薪燃料を頂く。ひと冬分の暖房燃料はカバーできなくても、少しはお金を介さない自己労働でエネルギーを獲得できる。慣れてきたならば、月に1日を2日にしてみる。ショッピングセンターやアミューズメントパークで遊ぶ時間の一部をピクニックがてら里山で活動する。そんな積み重ねが大きな持続可能エネルギーとなるような気がします。無理をする必要はありません。
以上が、僕も含め金山里山の会員かつ薪ストーブユーザーの姿です。そんな薪焚き人達は、現在ほぼ自家薪を持続可能で平均的家計レベルに維持し続けています。