One’s Way[ワンズウェイ]のブログでは、里山暮らしのあれこれを綴ります。ヘンリー・ デイヴィッド・ソロー の影響を受け、エシカルな暮らしを追求中。薪ストーブを暮らしの核とし、菜園、ガーデニング、サイクリング、ランニングなどを楽しんでします。

■ 自産自消(じさんじしょう)考 …by T2017/01/03

金山の里山風景
私たちが住む里山の保全活動を行っている金山里山の会。
会の活動を通して自産自消について考えてみました。

★★ 成長から成熟へ ★★
「山で作業をして、お茶飲んで、それで健康になって、あとは要らん。」

これは金山里山の会のあるメンバーの言葉です。

より多く、より速く、より便利に、これが高度経済成長を含む20世紀における豊かさの指標でした。そんな時代に於いては皆が一つの価値観、云わば成長という唯一の価値観のもとに、同じ方向を向いて一途に生きてきました。

しかし21世紀になり、成長一筋の価値観に疑問と不安が生じてきました。それは環境問題、エネルギー問題、健康問題等々、自分の将来と子孫の未来に対する不安でした。

かつて20世紀にアインシュタインは予言ともいうべき言葉を残しました。「ある問題が生じた時、その問題を解決するためには、既存のマインドセット(価値観)を変えないでその問題を解決することはできない。」今私たちは既存の価値観の転換に迫られているのではないでしょうか。

より多くよりもより気持ちよく、より速くよりもより末永く、より便利よりもより楽しく。成長よりも成熟へ。ここに無いものを新たに求めすぎずに、ここにあるもので最大限生活の質を高めるライフスタイルが、今求められているのではないでしょうか。


★★ 自産自消(じさんじしょう)という言葉 ★★
自分が幹径30センチくらいのコナラの木を一本伐採したとします。太い幹の部分は割って薪にします。細い幹と太い枝は椎茸のほだ木にします。そして細い枝葉はチップ化して堆肥にします。

薪は暖をとる過程で灰になり、椎茸ほだ木は椎茸収穫過程で椎茸菌により分解が促進され、チップ化された枝葉も微生物によって土に帰ります。よって一本の大きなコナラは人々の暮らしを支えながら最終的には土に帰り、そして土は再び新たな生命を育みます。

地産地消よりも自産自消。自給自足ではなくて自産自消。

自産自消とは自ら生産に従事し、その生産物を自ら消費するということです。また自産自消とは自給自足と異なり、全てのニーズを自ら満たす必要はありません。満たすことの困難なニーズは無理をしないで他から購入すればよいのです。

そもそも人類の誕生以来、人間は完全なる自給自足経済を経験していないでしょう。旧石器時代においてさえ石器の材料などは交易されていました。ひょっとしたら完全なる自給自足は光合成のできる植物界にしか存在しないのかもしれません。

しかしたとえ自給自足が非現実的な理想だとしても、自給自足に向けてのベクトル(志向性とエネルギー)を持つことは、決して無意味ではありません。とりわけ私たちが自立的・主体的・能動的人間を目指すならば極めて効果的でしょう。

そこに無いものや珍しいもの、依存的サービスなどを過度に追い求めず、なるべくそこにあるもので工夫しながら満たされた気持ちで暮らす。そんなライフスタイルが自産自消なのです。