One’s Way[ワンズウェイ]のブログでは、里山暮らしのあれこれを綴ります。ヘンリー・ デイヴィッド・ソロー の影響を受け、エシカルな暮らしを追求中。薪ストーブを暮らしの核とし、菜園、ガーデニング、サイクリング、ランニングなどを楽しんでします。

■ エス!エス! バイク(その4:経済面からのS.S.バイク)2017/01/21

S.S.バイクのラグとフォーク
2014年7月に『月刊ニューサイクリング』誌に投稿した原稿です。その後、廃刊となり掲載されないままとなっていた内容をこのブログに掲載します。

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★ 経済面からのS.S.バイク

S.S.バイクのフレームをオーダーした理由の一つに、ロードバイクのホイール問題があった。僕のロードバイク・ホイールは2004年から使用しているシマノ・デュラエース7800系ホイールだ。

この完全組み立てホイールのハブは、とても小さなボールベアリングとニードルベアリングが使われており、グリスアップも非常に面倒で、カセットフリー本体を外すための専用工具も必要だ。よって3、4年に一度の割合で富山サイクリングセンターでグリスアップをしてもらっていた。そのホイールが10年間の使用でかなり消耗してしまった。

ところで最近、それ相当の完組ロードホイールは10万円前後と高価で、カーボン・リムになるとクロモリ・スチールのオーダーフレームより高価な場合が多い。僕が今どきのロードバイクを維持していくために、今後どれだけの資金を投資していかねばならないのか。それを考え悩んだ末、これを機会に思い切って変速機の呪縛から解放され、シングルスピードのバイク、つまりS.S.バイクのみに乗り続けることを決心した。結果として完組ロードホイール価格に少し上乗せした予算で、クロモリフレームをオーダーすることができた。

バイクから変速機を削除しただけで、かなりのランニングコスト削減になる。パーツのモデルチェンジも少なくなる。メカトラブルも減少する。回転部分の分解掃除も容易になり、1/8チェンをいつもきれいな状態に保ちやすくなる。

最近のロードパーツはメンテナンスフリーと銘打った使い捨てパーツが多くなった。BBやハブ、ヘッド小物などカートリッジで交換する場合が多くなり、自分でこまめにグリスアップして微調整することが少なくなってきた。

このような大量消費傾向の一方で、日本を取り巻く経済状況は、公的年金における所得代替率が減少し、インフレーションが進行して貨幣価値が下がりつつあり、各種社会保険料や本当に社会福祉に使われるのか不信感の残る消費税が増加している。国や地方公共団体の借金は膨らむ一方で、自然災害も多く、将来何が起こるか予想できない、というか将来何が起こってもおかしくないという状況に思える。

でもどんな経済・社会状況であろうと、誰に何を言われようと僕はしたたかにバイクに乗り続けるつもりだ。そのためにはどんなバイクが望ましいか。

「過酷な経済状況の中で、自分に唯一1台だけのバイクを所有することを許可すると仮定したら、あなたはどんなバイクを選択するか。但しそのバイクはたとえ過酷な経済・社会状況であったとしても、タフで機能合理的、災害が起きても身軽に乗って非難でき、しかも限りなくお洒落で美しくあらねばならない。」

そんな問いかけを自分に投げかけた時、僕の回答は、S.S.バイクになった。

主として自転車販売店等によって後援・出資されている自転車雑誌の中で、「自転車にお金をかけるな」といったメッセージを発することは、多くの批判を受けることかもしれない。心の中でそう思っていたとしても、この場では発言を自粛すべきことかもしれない。否、自転車界のみならず、日本全体の景気を良くするためにタブーなのかもしれない。(景気とはどういうものなのか、よく分からないけれど)

しかし一方でこうも思うのだ。消費者行動の変化は、生産者の姿勢をも変化させるのではないか。つまり消費者はどの生産者のどんな生産物を選択・消費するかによって、その生産者を応援することになり、それによって他多数の生産者の志向性にも変化をもたらし、結果として流通社会全体を変えていく力になるのではないか。ひょっとしたら選挙における一票の力と同じくらい、買い物における一つの選択が社会を変えるのかもしれない。

僕は漂流したロビンソン・クルーソーのように、一切何も買わない(買えない?)のだと言っているのではない。買うものと買わないものの判断を主体的に行ないたいと述べているのだ。将来を見つめた丁寧な物作りを行なっている生産者の商品を買うようにすれば、その生産者は経営・生産を維持することができ、消費者もアフターケアを受けやすくなり、その商品を大切に末永く使うことができるようになる。結果としてフェア・トレードな健全社会に一歩近づくのではなかろうか。

ただ消費欲望を刺激し、必要以上の機能を持った使い捨ての商品をどんどん買わせるような流れに消費者が翻弄されるならば、商品も使い捨て社会、ひょっとしたら人間そのものも古くなったら(古くなる前に)使い捨て社会、ということになっていくやも知れぬ。金の切れ目が縁の切れ目のように。

ここで先人の御言葉を。
「ものをつくる人にいいものをつくらせ、ものを使う人にいいものを選ばせ、この国を美の国にしよう。」 柳 宗悦

【写真説明】ナベックス・コンチネンタルカット・ラグとボカマ・フォーククラウン。

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