One’s Way[ワンズウェイ]のブログでは、里山暮らしのあれこれを綴ります。ヘンリー・ デイヴィッド・ソロー の影響を受け、エシカルな暮らしを追求中。薪ストーブを暮らしの核とし、菜園、ガーデニング、サイクリング、ランニングなどを楽しんでします。

■ 小説『ペスト』 by T2020/04/05

山桜
新型コロナウイルス流行を契機に、世界中でA.カミュが著した小説『ペスト』(1947)を再読する動きが強まっていると聞いた。『ペスト』は十数年前に僕も一度読んだことがあった。でも『異邦人』や『シーシュポスの神話』に関しては再読してきたが、『ペスト』に関しては再読していなかった。先日、これを機会に家の書棚に残っていた『ペスト』を読み直してみた。

ペストとは、かつて恐れられた怖い伝染病。それは抽象的すぎるほど静かに退屈すぎるほどありきたりの日常隅々まで浸潤してくる。ペストは善悪分け隔てなく極悪犯罪人にも感染すれば、罪の無い無垢な乳幼児にも感染する。その不条理はつまるところ生きる意味というものを考えずにはいられない状況に人間を追い込んでいく。

とはいうものの、生きる意味とはあたかもスローガンを掲げるように単純明快に宣言できるものであろうか。僕はそんな単純明快さに正直寒気を感じずにはいられない。それとは反対に、生きる意味を常に悩み考え続ける、その思考の誠実さに対してこそ僕は敬意を払いたいと思う。

人間の努力というものは、ペストに感染しようがしまいが、コロナに感染しようがしまいが、遅かれ早かれ最終的に死によって無に帰す。そんな運命を承知つつも、ペスト以上に静かに単調に日々なすべきことを行い、決して死とは最後まで和解せず死んでいく不条理な人間。

今日も、日常の単調さ退屈さに耐えかね自ら感染を拡大させていく世界の人々。今こそ生きる意味を問い続けるチャンスである。死を考えることは今どう生きるかを考えることである。