One’s Way[ワンズウェイ]のブログでは、里山暮らしのあれこれを綴ります。ヘンリー・ デイヴィッド・ソロー の影響を受け、エシカルな暮らしを追求中。薪ストーブを暮らしの核とし、菜園、ガーデニング、サイクリング、ランニングなどを楽しんでします。

■ 千載一遇の本 by T2020/04/25

ヤマブキ
先日ブログの記事にも書いたが、A.カミュの小説『ペスト』が世界中で再読されているそうだ。『ペスト』以外にも、こんな時世だからこそ読むに適している本は何か、考えてみた。そして僕が出した答えは、断トツでドストエフスキー。

ドストエフスキーの小説『カラマーゾフの兄弟』。通称ドスカマと勝手に僕が呼んでいるこの人類史上屈指の大作は、人生で一度も読まずにこの世を去るのは、人間として最大の罪であり罰であり、最大の後悔、そう思いませんか?くだらない世界遺産を観光旅行するために大金を浪費するくらいなら、ドスカマを町の図書館で無料で借りてきて、家で静かに読んだ方が遥かに有意味。しかしながら今の時代、社会人として責務を果たしつつドスカマを熟読するには時間のスピードがあまりにも早すぎ、あまりにも多忙すぎる。ドスカマは19世紀的高等遊民の読み物であり、現代にはドスカマを読むシステムが存在しない。しかし!
このご時世は千載一遇のゴールデンタイム。皆さん黄金週間にチャレンジしてみますか?

とはいえ正直、僕はドスカマを再読する気分になれない。それは季節の問題。春から初夏へ、こんな活動的になる季節に、たとえ時間が腐るほどあったとしてもドスカマを手に取ることはできない。かつてドスカマは(たったの)2回読んだが、2回とも雪深い真冬だった。

というわけで、僕のお薦めはドストエフスキーの『死の家の記録』。このルポルタージュに極めて近い、ドス本人のシベリア獄中記録的小説では、孤独な自己検証と同時に、民衆といった他者観察を鋭く展開している。コロナという名の監獄で、本性を露わにし出した人間Das Manをじっくりと観察せずにはいられない今この時こそ『死の家の記録』には最適の環境。

さてさて、実際には、僕自身はこの場に及んで何を読む? 即決した。
トーマス・マンの教養小説『魔の山』。これで決まり!
結核という病と第一次世界大戦。新型コロナ肺炎という病と外出自粛という不自由

まさに『魔の山』である。