One’s Way[ワンズウェイ]のブログでは、里山暮らしのあれこれを綴ります。ヘンリー・ デイヴィッド・ソロー の影響を受け、エシカルな暮らしを追求中。薪ストーブを暮らしの核とし、菜園、ガーデニング、サイクリング、ランニングなどを楽しんでします。

■ Slow,Small,Simpleな家づくり(その17)施工編(8)2017/01/01

壁塗り
2002年9月に開催された、富山建築士会主催のオープンハウスに協力した際にまとめた文章を修正して掲載します。

/////////////////////////////////////////////

Our House In Green Valley(蒼い谷の家)
Slow(ゆっくり)Small(小さく)Simple(簡素に)

/////////////////////////////////////////////

⑧漆喰の壁塗り 2000年9月~10月

実は、漆喰の壁塗りは私たちにはできませんでした。当初の予定では、壁塗りを私たち自身の手で行いたいと思っていました。青井谷在住の左官屋である高松さんにその旨を相談したところ、「上塗りはとても不可能だと思うから、下塗りをやってみなさい。」と、快く了解して下さいました。

季節は9月の終わりで、里山は栗、松茸など、秋の味覚の頃です。「家作りの秋」とはあまり聞かれませんが、気候的にも仕事がとても気持ちよく行えるだろうなと、楽しみにしていました。しかし、その望みは第一歩目から打ち砕かれました。水上さんは「こうするんだよ」と、いとも簡単に壁土を鏝(こて)の上に乗せるのですが、これが本当に難しいのです。また、鏝に乗せても、今度は、石膏ボードの上に伸ばしながら塗っていくことがいかに難しかったことか。

壁塗りは、時間との戦いです。素早く塗ってしまわないと、乾いて塗れなくなってしまいます。さぞかし、高松さんはイライラしておられたことでしょう。でもそんな素振りも見せず、私たちの四苦八苦の様子を静かに視ておられました。ついに、私たちは、今の自分たちの技術では到底不可能と思い、あきらめました。

その時の高松さんの言葉が印象的です。「君たちにできないだろうということは、最初から分っていたよ。でも、言葉で説明しても納得しないだろうから、やらせてみたんだよ。」

私たちは、「セルフビルド」に執着していました。多少出来映えが落ちても、不可能ではないと信じていました。それが、「自立」だと思っていました。でも、この時こそ気持ちよくクラフトマンの援助を受け入れることができたことはありません。そして、その仕事に対し、金銭という形で応え、感謝の意を表すことに、微塵も疑問を抱きませんでした。

私たちは、難しい経済や流通の仕組みについてはよく分らないけど、仕事とそれに対する報酬といった世の中の仕組みの基本を見たような気がしました。人間全てがマルチプレーヤーになる必要はありません。受け入れることができる援助は活用して、幸福を実現するといった私たち自身の人生目標を達成していくこと、それが望ましいのではないかと思います。それは決して、依存的な人間になることとは違います。

個人として僕がどのような暮しをしたいか、どのような哲学を持っているかといったことを明確に自覚した上で、そのためにどのような援助が必要で、その援助は誰にお願いすればよいかを、主体的に考える姿勢を持ち続けることが大切だと思います。

腰を痛めながらも仕事をして下さった高松さん、本当にどうもありがとうございました。

コメント

トラックバック