One’s Way[ワンズウェイ]のブログでは、里山暮らしのあれこれを綴ります。ヘンリー・ デイヴィッド・ソロー の影響を受け、エシカルな暮らしを追求中。薪ストーブを暮らしの核とし、菜園、ガーデニング、サイクリング、ランニングなどを楽しんでします。

■ 反骨精神 by T2019/09/13

グレンモーレンジ
僕がウイスキーを好むのは、味や香りもさることながら、その誕生の歴史に魅了されるからだ。

ウイスキーの歴史は密造の歴史だった。

1707年、スコットランド議会は廃止され、イングランドに統合された。イングランド議会はスコットランドの蒸留酒アクアヴィテ(命の水という意味のウイスキーの語源)にとてつもない課税を行った。それはイジメを通り越して虐待以上のレベルだった。そこでスコットランド人は考えた。密造することを。

スコットランドのハイランド地方を訪れた人は思い出して頂きたい。そこはグレンと呼ばれるいくつもの谷が大地に刻まれ、身を潜ませ密造には適地。いざ見つかりそうになった時はオーク材でできた使い古しのシェリー樽に蒸留酒を詰め込んで山の中に隠した。

しばらくしてほとぼりの冷めた頃、樽を回収に行ってみると、あら!不思議。
無色透明の蒸留酒が何と琥珀色になっているではないか。オーク樽の香りも加わりこれが至福ウイスキーの誕生につながった。

ウイスキーの定義はとても簡潔。それは①穀物を原料としていること ②蒸留酒であること ③樽で熟成されていること。以上3点のみ。この3点を満たしてさえいればどこで作られようと、それは堂々ウイスキーと名乗ることができる。

オークの木と言えば、日本でいうとミズナラやコナラの仲間。すぐに飲みたいところをグッと我慢しナラの木樽で数年ジッと待つ。それはまるで一粒のドングリが大樹に成長するのをジッと待つように。

反骨の精神とは、直ぐにケンカし始めたり石を投げたりすることではない。非暴力非服従に時には逃げ回る。そしてじっと待ち続ける。そんな態度も立派な反骨精神。

逃げと待ちの強かな反骨精神は、今や世界を魅了する琥珀色の命の水となった。

写真はシングルモルトのスコッチウイスキーのひとつ、「グレンモーレンジ」
世界売上では第4位、地元スコットランド売上は第1位。1843年の創業時、資金不足で蒸留器はジン製造用の蒸留器を中古で使用した。ところがその首の長い蒸留器が思わぬ効果を発揮し、グレンモーレンジのフルーティでミディアムな風味を作り出した。ここにも「塞翁が馬」の歴史が隠されている。グレンモーレンジはその歴史を大切に守り、現在でも5、14mという世界一長い首の蒸留器を寸分違わず使用している。